AO-MONOLOGUE-LITHIUM 2022

ひとことで言うと、無料で公開している短いエッセイです

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

薪をくべる理由

ワクチンの会場は午前に繁盛し、午後になると閑散とした。今日はモデルナの会場だ。夕刻のいま、日が沈み、会場には接種希望者の姿が一人も見当たらない。他の医師は帰った。僕は何故だかいつも居残り。つい先日、「ファイザー→ファイザー→モデルナ」のほう…

引きこもる理由

相変わらず咳がひどい。気管支のほうから続々と痰が湧き出てくる。経過からしてウイルス性の急性気管支炎でほぼ間違いない。マイコプラズマになったことが学生時代に一度あるその時は痰のない乾いた咳が2カ月くらい続いた。医者には通わなかった。ちょうど大…

割れやすい理由

鼻水や咳は薬でどうにかなったが、昼夜逆転した生活リズムを元に戻すのは難しい。寝不足のまま仕事に突入する。頭はぼんやりするし気分は最悪だ。こんな自分で本当にいいのだろうか? と自分のいまの在り方そのものを疑うようになった。胸に鉛が詰まったよう…

パパ活を続ける理由 後編 「愛ではなく罪悪感」

このあと弟と散歩してくる。まだ咳が残っているが、完全な回復を待っていたら肝心の基礎体力の方が戻らなくなりそうだったので、どうせなら一緒に歩こうと弟を誘った。都内には歩くだけで心躍る道がある。もともと弟は身体障害者だ。100万人にひとりがな…

パパ活を続ける理由 中編「奉仕系エス」

結局咳がひどくなってきて、派遣会社の担当者に連絡し、本日月曜から水曜日まで自主的に隔離することに決めた。PCR検査の陰性が必ずしもコロナ感染の否定を意味しないことと(偽陰性)、たとえコロナでないとしてもこの風邪は呼吸器症状が強くワクチン会…

パパ活を続ける理由 前編「神輿モデル」

PCR検査で陰性と出たが、解熱後もひどい咳と鼻水と痰に悩まされている。どのくらいひどいかというと、咳込むたびに腹圧が上がるためか、胃液が喉元まで込み上げてくる。今朝はそれで目が覚めた。しばらく続いたので便器に首を突っ込んで吐いた。あまり心…

体調が崩れた7つの理由

月に1回くらいの頻度で扁桃腺が腫れて発熱してるという話を僕が配信ですると、「ワクチンを打ってから免疫がおかしくなったと思いませんか?」というコメントが必ず1日に1回は飛んでくる。たぶん陰謀論を信じているひとの目には、世界の事象は全てそうい…

ぼーっとする理由

喉のかすか違和感にはじまり、鼻汁・鼻閉・咽頭痛と症状が顕在化した。発熱や咳嗽や倦怠感は欠いていて、オミクロンを積極的に疑う所見はないものの気分はよくない。肉眼的に中咽頭粘膜の発赤あり、扁桃腺の腫大は軽度に留まり、白苔を認めず、年の暮れに患…

牙を抜かれる理由

東大前で17歳の高校生の男性が受験生らを刃物で刺した事件について、精神科医としての意見を聞かせてほしいと配信で頼まれることがある。ひとを殺すなんて絶対に精神異常者に違いないと決め打ちをして。その人だけでなく、おそらくだいたいの精神科以外の…

フローからストックにした理由

いつまでもカニを冷凍庫に寝かせておくわけにはいかなかった。総重量1.6キロのカニは狭い空間で圧倒的な存在感を発揮している。隙間にできたわずかな余白には薄っぺらい板の形をした保冷剤しか入らない。そういうわけで自宅に母と弟を招いて一気に平らげた…

金ローの 紅の豚 を見た

要約 かつて戦争で名を挙げたアドリア海の飛行艇乗りの男性がある呪いを受けて豚になり、中年になった豚が金と女と名誉をかけてライバルと最後の決闘に挑むハードボイルドな物語。 評価 ★★★★☆ よき 第一観 絵がキレイ。アジトで豚がバカンスする最初のシーン…

仮想の力

ワクチン会場で予診をしていると、せまく仕切られた予診ブースの壁の向こう側からさまざまな声が漏れ聞こえてくる。白い壁というか丈夫な板は仮設されたものなのでだいたい薄く立て付けはそれほど良くない。強く押したりもたれかかったりしたら簡単に倒れて…

ワクチン接種を促す2つの要請

去年の11月ごろ配信でよく「第6波はくると思いますか?」と訊かれた。遅かれ早かれくると思います、と僕は答えたが、そのあと質問は飛んでこなかった。あのころ、ようやくコロナを克服できた、遂にワクチンの成果が出た、手洗いうがいの成果が実った、な…

自己愛領域と毒針分析

吐けるだけ吐いて胃袋の中身を空っぽにしたら大泣きしたあとみたいにスッキリした。嵐が過ぎ去り、静かな凪を眺めているときのような落ち着いた心境に至った。38度に迫ろうかという急な発熱も1時間のうちに正常域まで回復した。空腹を感じて流動食みたい…

激しく灼く

胃部の不快感で目覚めた。仕事は午後からなので目覚まし時計はかけなかったが、7時ちょうどに目が覚めた。しばらく様子を見ていたが症状は変わらず、喉の奥に込み上げるものを感じたので便器まで行って指を突っ込んで吐いた。寝起きの嘔吐は人生で初めてか…

時間をかけて学んだこと

昨年の6月くらいに正式にそれまで付き合っていた女性と別れた。その1年前からほとんど連絡を取り合っていなかった。5、6年間付き合っている中で大げんかしたことが何回かあって、そのつど会話しない冷却期間のようなものがあった。交流が途絶えて1年も…

時間をかけて伝える理由

前回の記事を読んで僕のことをイヤなやつと思ったり礼儀正しいやつと思ったり、読者の間で賛否両論あると思うけれど、僕だけではなく相手の時間という資産を守ることこそが誠意だと信じている。あなたがこの文章を読むのだって時間がかかるわけで僕はあなた…

時間を奪うことは少しだけ殺すことである

白衣を着ていない先生がいらっしゃるというご報告もあがっております。いま一度ご確認をお願いします。 このような文面のメールがワクチン会場の運営の担当者から一斉送信された。白衣を着ていない先生というのはきっと僕のことだ。いや、他にも着ていない医…

豚にならない理由

この冬場にエアコンが壊れてしまい修理までの2晩を寒い中で過ごした。パーカーの上にダウンジャケットを着て、さらに首にマフラーを巻いて眠ったが、気づいたらマフラーやら毛布やらが全て外れていて極寒で3回くらい目が覚めた。おかげで昨日の当直の疲れ…

白衣を着ない理由

僕は医者として患者の前に出るときいつも白衣を着ない。このことでこのあいだワクチン会場の運営スタッフから注意された。医者なんだからちゃんと着てくださいと。医学部時代のポリクリ(病棟実習)のときはオーベン(上級医)の目もあったしそこは大学病院…

ふわっちの通報の仕方

配信で荒らされることが増えたので、視聴者の皆さん向けに通報の仕方をレクチャーします。ぜひ僕の配信が荒らされたときはもちろんですが、ほかのお気に入りの配信者さんが荒らされていたときは、変なコメントを通報してあげてください。ちなみに、僕は下記…

楽観論に思う

新型の変異株が流行の兆しを見せている、そういう内容の記事をヤフーで読んでいると、「専門家は感染拡大すると脅しているだけでそんなことなら誰でもできる」という専門家ディスや、「ようやく弱毒株が広がってきてただの風邪になりましたね」という楽観論…

死ぬよりはまし

新年にYahoo!ニュースのトップニュースに後輩が取材を受けた記事が載っていた。医局のグループラインに情報が流れてきて、リンク先を見たらやっぱり立派な記事だった。とても誇らしい。努力は報われると。でも記事を読むことにはなぜだか抵抗があった。きっ…

致命傷

通年で月1回の頻度で開催される精神分析系の勉強会があった。無事に参加できていれば僕は今年の3月に修了予定だったが、年の暮れにメンタルの不調に襲われて、主催者の先生にお詫びのメッセージをいれてドロップアウトさせてもらった。もうこの世界で長く…

医者の適性とは

僕は医者に向いていなかったのではないか、とたびたび思う。どんなときにそう思うかというとだいたい壁にぶち当たって思い悩んでいるときで、僕の場合、それは深夜の当直中に病棟に呼び出されてムッとするときや当直あけに意識が朦朧とした状態で患者と話し…

嘘を見破る3つのコツ

前回の記事でワクチン陰謀論に浸ってしまうひとたちにはひとを見る目がないことを指摘した。すると、今度は「じゃあお前にはひとを見る目があるというのか? お前は神様か?」と意地悪な反論というか嘲笑が飛んできそうだったので、飛んでくる前に打ち返そう…

陰謀論者の悲哀

昨日が2022年の初仕事だった。ワクチンの予約数が思いの外すくなくて待機しているだけの暇な時間を過ごした。おかげさまでブログも書けたし、1時間くらい配信もできた。テレビにも退屈しはじめたリスナーがたくさんきて、新年の挨拶をしてくれた。とて…

パパ活という営み

まずこういう不道徳な話をすると、けしからん! と怒鳴り出すひとや、いかがなものでしょう? と諌める風紀委員が必ず湧いてくる。彼らは単なる文字列の刺激に脊髄反射を起こす。もし心当たりのある方はここから先は読まない方が身のためだ。心臓の弱い方が…

正を刻め

去年大学病院を退職して以降、コロナワクチンの予診のバイトをちょこちょこ頂きながら生活している。バイトといっても医者のバイトなので生活には全く困窮していない。いくら医者が溢れた都内でも時給1万円くらいは保証されている。コロナワクチンとなると…

無視ではなくブロックで

年末に母とすこし話した。この1年の間に溜まりに溜まった不満を聞いた。というか聞かされた。やれやれ。どうしてこうも女性は延々と愚痴を言い続けられるのだろうと感心した。その内容の大半は、友人らに対するものだった。「〇〇」などと空気の読めないこ…