AO-MONOLOGUE-LITHIUM 2022

ひとことで言うと、無料で公開している短いエッセイです

陰謀論者の悲哀

昨日が2022年の初仕事だった。ワクチンの予約数が思いの外すくなくて待機しているだけの暇な時間を過ごした。おかげさまでブログも書けたし、1時間くらい配信もできた。テレビにも退屈しはじめたリスナーがたくさんきて、新年の挨拶をしてくれた。とても有意義な時間を過ごした。そんななか、やはりオミクロン株やワクチン接種の話題にも触れることになった(今の時期、2人以上の人間が集まると、天気の話と同じくらい必ず一度はこの話題に触れることになる)。都内の感染者も増えてきた。海外に目を向けると、YouTuberのひろゆき氏が住むフランスでも1日の感染者数が20万人を超えて大きな衝撃が走った。おそらく日本でも感染者数が過去最多を更新することになるのだろう。医療従事者の端くれの僕も昨年末に3回目のファイザーを接種したばかり。過去2回に比べて全身倦怠感が強く、翌日は安静に部屋で過ごした。 配信でこういう事実を述べると、必ずと言っていいほどワクチン陰謀論者と呼ばれるひとが湧いてくる。そしてこういうコメントを残す。「このゴミ、ワクチン打て打てってうるせえ」。このゴミというのは状況からして僕のことを指しているだろう(いちおう弁明すると僕はワクチン打て打てと言わない、推進派ではない、いわゆる中立派の立場を一貫している)。コメントの口調から察するにどうやら陰謀論者は男女問わず複数名いるようである。いちおう僕が定めたブロック基準に当てはまるのでブロックすると、まもなく捨て垢で同様のコメントを連投してくるので再びブロックする、という不毛な事態が繰り広げられる。おそらく今日も配信するとやってくるはずだ。昼夜を問わず。もし彼らがコロナに罹ったら来るかどうかわからないが。 ワクチンの有効性に関しては変異株の出現で多少の減弱はあるものの、全く打たないという状態に比べると有効性は60-70%は保たれており、重症化リスクを抱えた患者や高齢者、医療従事者から3回目の接種が望ましいと考えられる。そのほかのひとの接種に関しては、オミクロン株の重症化率や死亡率などのデータを待ってからでもよいかもしれない。割と普通のことを僕は言っている。でもこういうことさえ陰謀論に毒されたひとたちは聞く耳を持とうとしない。長期成績はこれから出てくるので半信半疑で構わないが、きわめて優秀な短期成績を叩き出しているにもかかわらず彼らがその数字を無視するのはなぜだろう。「でも医者の中には打っていないひともいますよね」とまるで決定打みたいに彼らは僕に反論するが、そもそも医学は科学なので数字や統計で議論してほしいと思う(医者でも打たないひとの例として、例えば重篤アナフィラキシーを過去に起こしたことがあるひと、抗がん剤治療などでワクチン接種できないひと、急性の感染症に罹患しているひとなどが想定される)。たたき台となる共通の土台のない、接続不能な思考というものほど怖いものはない。感情論や心象操作に騙されないでほしい。きちんとデータを見よう。 騙されるひとの特徴は、頭が悪いのは言うまでもないが、おそらくひとを見る目がないのだ。ひとを見る目がないのは能力的な問題でもあるし、いままでの人生で信用できるひとに出会えなかった不運でもある。頭が悪くても情報を提供するひとを見る目さえあれば騙されないで済む。たとえば前頭葉機能が低下した(判断能力に乏しい)認知症が必ずしも全員詐欺に引っかかるわけではない。周りに親切なひとがいれば詐欺には引っかからない。一般的にインターネットで自由に書き込んでいるひとやテレビのコメンテーターのひと、そして僕も含め、きちんと会話できないひとはすぐに信用しない方がいい。判断がつかない場合、判断を留保してよく時間をかけてひとを見極めよう(繰り返すが、あなたは医療の専門家ではないのだから、わからなければまずはひとを見極めよう)。僕は医者だから専門のことはわかるけれどそれ以外、たとえばスマホの選び方など全くわからない。だから、スマホなど電子機器に詳しいひとを2ー3人選んで、彼らの言うことを比較して決めている。スマホに詳しくなくても人選び、目利きであればそんなに大きな間違いは犯さない。そういうものではないかな。話を戻すと、陰謀論に取り込まれて行くひとは、いろいろと恵まれていないと思うので、説教を加えたり侮辱したりしてさらに傷つけたくないので、黙ってブロックしてあげるとよいという結論。