AO-MONOLOGUE-LITHIUM 2022

ひとことで言うと、無料で公開している短いエッセイです

時間をかけて伝える理由

前回の記事を読んで僕のことをイヤなやつと思ったり礼儀正しいやつと思ったり、読者の間で賛否両論あると思うけれど、僕だけではなく相手の時間という資産を守ることこそが誠意だと信じている。あなたがこの文章を読むのだって時間がかかるわけで僕はあなたから寿命の一部をいただいているわけだし、書くことに妥協はしない。もちろんなるべく平明な言葉で書いているつもりだ。他方で、無駄にに長いし決して読みやすいブログとはいえないかもしれない。でも、結局のところ僕に時間を割こうと思うひと、本当に僕のことを応援しようとしてくれるひとにだけ届けばいい。あなたがこの文章を読むだけでそういう形であなたの誠意は僕の元にちゃんと届いている。 ところで僕にはあまり物欲はない。だから正直にいうとお金にあまり興味がない。腕時計も中学生の頃に親に買ってもらったGショックしかないし、時間を知りたいときは画面がパリパリに破れたiPhone8をポケットから取り出して見ればいい。ファッションも寒さがしのげればいい。機能がちゃんとしていればいい。生活水準は研修医の時に少しだけ上げたが、精神科医になってからは全く上げていない。医者なんだから投資をしましょう、将来のために語学力を身につけましょうなどと焚き付けられることもあるが、いまこの瞬間の時間という重要な資産を「自己投資」などと称したくだらない小銭稼ぎの手段にしたくはない(お金を稼ぐために今を犠牲にして何が面白いのだろう)。たしかに自由を得るためのお金は最低限必要だと思うが、そもそも物欲がないし結婚もしないので年収400万円くらいあれば十分に満足して生きていける計算だ。金持ちになる必要は全くない。 僕は時間というか寿命という資産を自己投資や投機(ギャンブル)などではなくひとと出会うことや話すことに費やしたいと常々思っている。どっちかというとキャッチよりリリースに重きを置いていて、伝えること、表現することに時間を費やしたい。誰かの感情の発露をキャッチするのは疲れてしまうし、精神科医という一つの職業になるほどの重労働に違いない。しかし、それと対照的にリリースすること、感情を発露することはこれ以上ない快感と言えるのではないだろうか。僕だけかもしれないけれど、自分の頭の中にある物事がちゃんと相手に伝わった時に幸福になれる。表現を積み重ねていくとき、そしてそれが誰かのもとに届いていると信じられたとき、僕は伸び伸びとした自由な感覚を手に入れることができる。悲しみを物語にできた時ひとりで泣き寝入りしなくてよかったなと心から思える。僕の場合、書くことや話すことは手段ではなく目的である。ネットの活動を通じてアフィリエイトを実装したりフォロワーを集めて影響力を持つことは僕の関心の外側にある。そうでなければ誰にも注目されない状態で11年間の配信と13年間のブログ活動を続けるのは難しかっただろう。暇ではない中で1日に何時間もの時間を配信や執筆に費やすのは、これにこそ寿命を使いたいと願うからに他ならない。お金よりもそういった体験の方が本質的に僕の心の栄養なのであり、それがないと痩せ細ってしまう。 ちなみに書くことや話すこと、もっと抽象化して言えば伝えることにまつわる僕の快感は、おそらく幼少期の伝わらないことの不快感と密接につながっている。精神分析的にいえば、何かを念じても決して伝わらない母子関係、通じない情緒、察しの悪い母親との関係性が今の僕が抱えている人間関係にまつわる苦悩の原型と言えるかもしれない。三つ子の魂百までいうが、フロイトが発見したように、一見すると不合理な個人的な性向は幼少期の頃に形成された可能性が高い。この辺りのことはまた恋愛やパパ活について書く時にも折に触れて述べることになるだろう。