AO-MONOLOGUE-LITHIUM 2022

ひとことで言うと、無料で公開している短いエッセイです

豚にならない理由

この冬場にエアコンが壊れてしまい修理までの2晩を寒い中で過ごした。パーカーの上にダウンジャケットを着て、さらに首にマフラーを巻いて眠ったが、気づいたらマフラーやら毛布やらが全て外れていて極寒で3回くらい目が覚めた。おかげで昨日の当直の疲れもしっかりと残っている。だいぶ不機嫌ななか、しかも今まさに僕の隣りで業者がエアコンの取り付け工事をして騒がしい状況下で何を書こう。 不機嫌ついでに僕が最も不機嫌になる状況を言うと、なにかの行列の最後尾に並ばされるときだ。僕は行列に並ぶのが苦手だ。というか相手の都合で待たされることに怒りを感じやすいようなのだ。想像してみてほしいが、そこかしこに行列なんていくらでもあるし、それを前提にしている業種も少なくない。例えば、行列のできるラーメン屋や映画館、ディズニーランド、初詣。こういうものから僕は基本的に避けて生きている。そこそこ不便な生活を強いられる。飲食店なんて最悪で、家畜を喰うために家畜みたいに列を成して並ぶなんて馬鹿げている(千と千尋に出てくる豚にされた両親の姿を思い浮かべながら)。それは言いすぎたかもしれないが、読者に嫌われることを覚悟の上であえて傲慢に言うなら、こういう計算ができるかもしれない。医者の僕は最低でも1時間に1万円は稼げる。そんな僕が800円のラーメンを食べるために1時間も行列に加わっていたらどうなるか。大赤字だ。僕は一杯のラーメンに800円を支払うのではなく、ラーメンと行列に加わることの不快さに10800円を支払うことになるわけだ。なんなら列に加わってあげた労力で800円を支払いたいものだ。ラーメンがこの世でもっとも美味しい料理ならまだわかるが、ラーメンはラーメンにすぎない。よく考えてみれば高血圧と糖尿病になるための食材しか入っていない。店内には美人なキャビンアテンダントもいない。行列に並ぶ値打ちのあるラーメンなど原理的にこの世に存在しない。だから、臆面もなくラーメン屋の行列に加わっている連中を見ると、僕はラーメン以下の矜持しか持ち合わせていない恥ずかしい人間の宴だと思っている。待たされることになんの疑問も怒りも持たない純粋無垢な家畜なのだろう。よく調教されている。 そんなわけで僕はいかにも閑古鳥が鳴いているような不人気なラーメン屋に入ってみる。ああ、店内には誰もいないしコロナ禍には最高じゃないかと愉快に思ったが、出されたラーメンの不味さに吐き気をもよおし不機嫌になった。二度とラーメンなんて食べないと心に誓った。

 

 

ao-hayao.hateblo.jp

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