AO-MONOLOGUE-LITHIUM 2022

ひとことで言うと、無料で公開している短いエッセイです

人前で歌わない理由

僕が人前で歌わないのは、そもそも目立ちたくないというのと、あと一般受けしている曲をほとんど知らないからだ。つい昨日のこと。お酒も入って上機嫌になって、珍しくカラオケ配信した(伴奏は著作権の問題で流さなかったので正確にはアカペラ)。そのときも、やはり懸念していたことが起きた。リクエスト曲を募ったところほとんど知らない曲ばかりだった。僕以外の、その場にいるひとは全員知っていたようだ。なかには、これを知らない方がおかしいと公然と無知な僕を批判するひともいた。あれは率直に不快だったな。相手も酔っ払っていたのだろうか。全然笑えないし、酔いが覚めたいまもはっきりと思い出せる。マジョリティに属しただけの優越性。 それより寂しいのは、音楽を知らないということ。どの文化圏にも属していない、放浪者としての自分が不意に暴かれてしまったような感じ。僕は自分を孤独だと思う。こういう話をすると「わたしもわたしも」と僕の後を追う者が出てくるけれど、彼らは共通の音楽でつながっている。大きな輪の中にいる。彼らが仕切りに自分のことを孤独と演出したがるのも、一般受けを狙ったファッションの一部なのかもしれないとすこし残念に思った。やはり僕はひとりだった。