AO-MONOLOGUE-LITHIUM 2022

ひとことで言うと、無料で公開している短いエッセイです

ブロックする理由

 〇〇な理由、という形式のタイトルに味をしめた。読み手の好奇心を刺激するし、書いている本人も文章の着地点(なぜなら〇〇だから)があらかじめ見えているのでとても助かる。

 今回は前回すこしだけ触れた、いわゆる「荒らし行為」について。言うまでもなく、それは配信活動を妨害する行為の総称であり、その行為の主体を「荒らし」と呼ぶ。考えただけで腹立たしいので手短に述べる。たびたび「それはあなたの気にしすぎなのでは」と、配信者の側の過剰反応を指摘する鋭い意見をいただくけれど、そのご指摘はまったく芯を食っていない。というのも、「気になるのでやめてください」と率直にこちらの側の感じ方を伝えてもなおその行為がやむことがないからである。決して当事者の気にしすぎなどではなく、明確な悪意のもとに配信者の嫌がることを的確に狙い撃ちするのが荒らし行為の本質なのである。したがって荒らし行為そのものが適切か過剰か、という議論には意味がない。この前提が視聴者にも共有されていないと、配信者がさらに傷つくという二次被害を生む。

 11年間インターネットで配信してきて、すごく素朴に「荒らし」を類型化すると、以下のようになる。なお、結局のところ答え合わせができないので、この類型はあくまで僕の想像の域を出ない(予診のあいまに書いているので抜けてたら申し訳ないが後日書き足す)

 

1)知的障害もしくは境界知能(IQ70台前半)

2)発達障害自閉症圏)

3)パーソナリティのゆらぎ

4)嫉妬攻撃

5)CIAMS(シャムズ)

 

 荒らしについて考えたとき意外に見落とされがちなのが知的障害や境界知能なので、強調するためにあえて最初に挙げた。もちろん差別の意図はないし、他意はない。1)に該当するひとたちは純粋に言語理解の能力が著しく欠乏しており、こちらの発言の意図をどれだけ丁寧に時間をかけて説明しても伝わらない。罵詈雑言にたいしてこちらが何かを言うと「お前、うるせえ、いちいち口答えするな」と反論される。不毛な押し問答を繰り広げる。あ、さっきからやりとりがループしているな、と思うとき、僕は知的障害をまっさきに想起する。そして、双方の時間の節約のためになるべく早めにブロックするようにこころがけている。

例:は、うるせえ、お前。きめえ。口答えするな。女性器をものみたいに扱うな。

 

 2)の発達障害、とくにアスペルガー症候群もそれに近いところがある。時間をかけてもしょうがないしどうしようもないからブロックするしかないな、という意味で。だいたいにおいて悪意はないけれど、配信者を脈絡のない質問攻めにすることで場の空気を白けさせるので荒らし行為に含めている。

例:バイデン政権についてどう思いますか。強迫性障害の治療について解説してください。〇〇の薬理効果について先生のご意見をお願いします。

 

 3)は単純に意地悪なやつである。喜んでいるひとを見るよりも苦しんでいるひとを見たほうが爽快なひとたちのこと。自分の悪事を棚に上げて、たとえば不倫した芸能人の所業をあげつらい完膚なきまでに叩きのめすことで清々しているひとたちがいる。パーソナリティのゆらぎというのはそういう発散の仕方を好むタイプのひとのことである。自らの正義感に心酔しているタイプ。ただ知的障害者とは違って、意外と普通にサラリーマンとか主婦とかしていて、社会生活は全然破綻していない。この種類の人間も凶暴化したら無視するかブロックしたほうがいい。「やめてください」とか「なんでこんなひどいことをするんですか」などとまともに反応するとそういうひとたちは余計に喜んで、さらに集まってきてしまう。

例:先生、質問があります。なんでそんなにバカなんですか? あれ、なんで無視するんですかね。なんか怪しいな。器が小さいね。人の弱みがわからない人間だろ。かす。なんかかわいそう。

 

 4)はある種のコンプレックス(劣等感)をうちに秘めているひとたちのこと。もっとも皆さんが想像しやすいタイプではないだろうか。彼らの行動の起点はコンプレックスにあるので、物語みたいに心理学的に説明できる。僕は自分が医師であることを公表しているので、たとえば大学受験に失敗して医学部に合格しなかったひとたちの恨みを買いやすい。「医者のくせに」、「医者じゃないくせに」などと「医者」という特定のキーワードがひっかかってくるとき、このタイプの人だなと思う。ちなみに、一番話せばわかるタイプなので、うまく誤解を解消できればいいリスナーになってくれるかもしれないな、という淡い期待を持っている。時間をかけてなぜ僕を攻撃したくなったのか、というテーマで対話を試みることがある。5つのタイプの中で唯一、精神療法の適応となる荒らしの型なのだ。

例:医者のくせになんでこんな時間から配信してるの? 本当に医者なの? 

 

 5)は僕のオリジナルの考えではなく、総合内科医の國松淳和先生が提唱する概念をそのまま引用している(『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』金原出版、2020年)。詳しくは本を読んでもらうしかない。要するに、もともと身体疾患を持っていてコロナ禍のストレスに慢性的に晒されているひとの中で、人格がガラリと変わってしまうひとがいる。そういうひとを國松先生が「シャムズ」と呼んでいる。たとえば以前は面倒見のよかった先輩が、コロナ禍になって人が変わったように周囲のひとを怒鳴るようになった。胃カメラ検査したら胃がんが見つかったなど。荒らしのもとの状態を知らないけれど、なにか身体に異変が起きていて、ストレス耐性が低下しているようなイメージ。それなりに学歴のある優秀なひとなのに、コロナの話題になると突然、本当に突然、感情的に陰謀論を唱えるひとがまれにいる。たまたま配信中にコロナの話題になって、「アビガンをなぜ使わないんですか?」と執拗にコメントを連続投稿したひとがいたが、こういうとき、ああ、なんだか身体が心配だな、いちおう採血とかしておきたいな、と医者として思う。そうはいっても配信は診察室ではないので採血できないし、やはり時間の無駄なので「ご自愛ください」と祈りつつ静かにブロックしている。

例:イベルメクチンを使わないのはなんでですか? なんでワクチン接種後の死亡者がいるのにワクチンやめないんですか?

 

 

 

ao-hayao.hateblo.jp

 

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