AO-MONOLOGUE-LITHIUM 2022

ひとことで言うと、無料で公開している短いエッセイです

目標は

今年の目標は? と聞かれることはないし、そもそも僕の周りにはひとがいない。だから目標なんて考える必要もなかった。だけど、テレビ番組のインタビューで誰かがそういう類の質問に答えているところを見ると、自分だったら何て答えるだろうと考えてみることがある。今年の目標は? 考えてみたけれど、インタビュアーが期待して待っている答えはなんだろう、という思考、いわばサービス精神のほうが先走ってしまって、結局なんだか自分でもわからない。極論を言うとたぶん僕には意見というものがない。良かれと思い嘘をつく。すると言説が勝手に独り歩きを始める。僕のいうことは正確に言えば僕ではない。きっとこのような僕がみんなに期待されているのだろうと僕が考えた僕の虚像だ。常に誰かの顔色を気にしている。どのような答えがその場により相応しいか、相手にとって害がないか、という他人目線が明らかに優先されてしまう。ほぼ自動的に。僕は別に優しいわけではなくて、ただ他人に干渉するほど確固とした我(が)がないだけなのかもしれない。他人の波動とこちらの波動とで干渉現象が生じると厄介だ。対立は避けたい。じゃあお前はいったい何を考えてるんだ、とやや喧嘩腰で詰問されるのがイヤで僕は生まれてからずっと逃げ回っている。もし軽はずみに相手の考えを否定すると確固とした整合的な理由を求められるから苦手だ。僕でさえも僕の考えがわからないのだから。質問しないでほしい。ただ見守っていてほしい。